「頑張るな‼」「何かしようとするな‼」

仕事の量が減ってるんです

「最近は仕事の量に余裕が出てきたから、業務がやりやすくなったね」

私がそう言うと、その言葉を受けた社員がうつむき黙って首を横に振った。

 

「仕事の注文が激減してるんです」

本当は取引先から注文など来てはいない製品を作っているのだという。

作った製品は倉庫にストックしていき、もう倉庫はいっぱい。

下請け業者の倉庫まで借りて、さらに製品をストックしていっている状態。

捌けない製品在庫

製品を作り続けて、自社の倉庫にストックしていく状態。

「それでも製品はコンスタンスに注文が来て、そのうち捌けてはいくんでしょ?」

どっちみち、取引先からそのうち注文が来る分を先に作っているのだろう、私はそう思ったのだ。

 

しかし、…違うようだ。

注文はいつ来るかも分からない状態。

注文が来るかどうかの確信もないという。

担当営業が取引先に対して、これからの注文量を確認しても、「分からない」という返事しかもらえなかったという。

 

もう自社の倉庫はいっぱい。

下請け業者の倉庫まで占領していっぱい状態。

浮上して来た疑問

この企業、実は元々仕事量は少ない。

私が入社した時、過去に例をみないほどマックスの状態で稼働していただけ。

潮が引いたのだ。

しかしながら…潮が引き続けているという。

以前より、引いちゃってる状態。

 

そういう状況の中で、やはり『残業』が問題となっていた。

1名だけ残業をし続ける社員が存在するのだ。

仕事の注文が来ないのに、人件費と材料費を放出しているという悪魔の所業。

 

「ありえへん…こいつ」

なんて思っていたのだが、ふと「あれ?」と思った。

私が入社する仕事量の少ない時代にも、彼らは社員全員で残業しまくっていたからだ。

「一体、どこから残業代が出て来てたんだ?」っちゅう状態を、何十年と続けてきているはずなのだ。

今さら売り上げが少ないからと言って、困るってのもおかしな話なのだ。

そんなヌルヌル環境を何十年と続けてきたのに、なぜ今さら困るのだ?

いままでどこから金が湧いて出て来ていたのだ。

若い社員がいない職場

ここの会社にはとにかく若い社員がいない。

極端に少ないのだ。

年齢層が40代50代に集中している。

 

この40代50代の社員達というのは、私が会社に入った当初『残業の美学』を熱く語っていた。

大量にいる40代50代の社員達は20年30年という超長い勤務年数の者ばかり。

大半が生え抜き社員で構成されているのだ。

これが全員昇給して、売り上げに対して人件費の占める割合は異常なまでに肥大しているはず。

さらには、昇進昇格も当たり前の儀式として用意されており、どいつもこいつもに肩書がついている。

そんな奴らが毎日何時間も残業をし、さらには休日出勤までしていたのだ。

残業や休日出勤を社員同士で互いに褒め合い、さらには残業時間に闘争心を剥き出し、より長く会社に居座る体制だったんですよ。

 

会社が「金がない」というのは当たり前の事。

でも、何でいまさら金が無いって…どういう事?

私にはよく分からない状況なのですよ。

普通なら、とっくにバーストしているはずなんです。

でも、彼らの反応からすると、バースト寸前らしいんです。

バースト寸前なのか?

規模の小さい企業であれば、ロクに業務にも参加しないような肩書きの付いた中年が残業ばかりした暁には、当然会社の資金繰りで行き詰る。

早々に会社の首が締まり、直に経営破綻するだろう。

 

小さなケーキ屋さんの店舗をパティシエと販売員の2名でやっていたとしよう。

店員が若い20代の社員の時、給料は2人で40万。

ケーキも作った分の大半が売れ、ロス率も少ない。

こういう状況であれば、当然経営は順調に出来る。

 

しかし、これが30年年を重ねた今不況がやってきたら?

昇給して2人合わせて給料は100万。

ケーキは売れなくなっている状態が続いているにも関わらず、ケーキを以前と同じ量作り続けたら?

存在しない売上げに対して、2人の人件費とケーキの材料代がそのまま損益として計上されるだろう。

 

こんな状態に本部が勧告をしたら、サラリーマンというのはこういう事をし始める。

ケーキを作るのを止めて賞味期限の長いクッキーを作り始める。

ケーキが売れない中、クッキーが売れる理由など無い。

いかし、賞味期限が長ければ売れる可能性があると考えるのだ。

毎日毎日、クッキーを作り在庫の山と材料費の損失を上げ続ける。

とりあえず、何かしていれば許されると思い込んでいるからだ。

 

雇われサラリーマンは「利益が上がっていない!」「利益を上げろ!」と言われると、彼らはとてつもなく不思議な行動を取っていた。

残業をし始めるのだ。

「何かをする」事を、利益を上げる事だと思い込んでいる。

目の前にある事柄に熱意と時間をかけ始めるのだ。

あり得ない事だが、営業マンに「利益を上げろ!」というと、取引先を開拓したり営業活動をやり始めたりは一切せず、事務所のデスクに座り込んで夜遅くまで残るようになってしまう。

こんな現実を私は何度も見てきたのだ。

 

何かしてれば許される。

こんな考えを長い間まかり通して来たツケが、今から回ってくるわけだ。

会社に自分の存在を残してもらうために許しを請う。

そんな事をいくらしても、売り上げなど微塵も上がらない。

売上げが上がらなければ、自分の給料など出てくるはずがない。

 

傍から見ていて何かしているけど何をしているのか全く分からないオッサンが大量にいる。

そんなオッサンの世話を焼く、オバハンもいる。

業務に無理矢理絡めた事をしているため、本人はそれを仕事だと思ってもらえると考えているのだろう。

しかし、別にしなくてもいいような事を山のように自分で作り、周りの社員まで巻き込んで熟すのは…。

「何かしてれば許される」

もう、そんな時代じゃない。

金銭的に誤魔化しが効かない。

何かしようとするな

これまでは、大して仕事量もないのに、時間ばかりを引き延ばして残業ばかりして…

やる事もないのに給料のクソ高い肩書き付いた男が休日出勤で、日曜日の会社に勢ぞろい。

『仕事してるフリ』

こんな事ばかりを熟してきていた。

 

ある程度の仕事量があれば、『仕事してるフリ』でも誤魔化せただろう。

でも、許されるレベルよりも仕事量が減ったなら、『仕事してるフリ』なんてすぐバレる。

バレているにも関わらず、そんな事しか身に付いていないから、そこにある業務も出来ず『仕事してるフリ』に励んでしまう。

 

自分がやっている事が何の意味もない事。

この事実に周りの社員が気付いていないと思い込んでいる。

周りの社員が思い込んでいるというよりは、自分がそう思い込もうとしているように見えてきた。

『何かしている』という状態に我が身を置こうと、その『何か』に対しての熱量が必死過ぎるのだ。

職場の中で『仕事』を知らないまま長い期間過ごし、よく分からぬ『何か』に励む社員が何人もいるのだ。

 

彼らは自分のやっている事が後ろめたい事をある程度は理解出来ている。

「お前、それ仕事ちゃうやろ!」

そう、今の職場の管理職に私は突っ込みを入れたのだ。

ツッコまれた管理職は驚愕の表情で絶句した。

 

彼は自分が勝手に作り出した書類を社員達に毎日記入するよう命じていた。

記入を忘れた社員を捕まえては、それを時間をかけて咎めていた。

そして私がそんな状況を見あぐね、「お前、それ仕事とちゃうやろ!」と言ったわけである。

 

「金にもならないような事を仕事と思ってやるな!ボケッ‼」

「肝心の仕事から逃げるために、奇妙な自分のための仕事を作りくさるな!」

誰もいない場所で1人の管理職を怒鳴った。

こう言われた彼は何も言わず、すぐにその書類を闇に葬った。

 

すると…、次の日から他の管理職も奇妙な事をしないようになった。

自分で奇妙な書類を作り出し、社員全員に毎日のように記入させる。

これが、常習化していたのだ。

こんな書類を新しく作成はしなくなった。

しかしながら過去に作った書類たちは、無くなる事は無かった。

 

彼らは自分たちがやっている事が後ろめたい事をある程度は分っている。

しかしながら、分かっているのはある程度なだけで、やはり分かんないのである。

ずっと、そんな事ばかりをしてき続けてきたため、それを仕事だと思い込んでやろうやろうとする傾向も強い。

企業自身が社員の教育の仕方を間違えてしまったため、人材として腐ってしまっているのだ。

熱意で仕事を熟さないでほしい

仕事の注文量が減って来た今、製造が作っているのはただの在庫。

もし、製品を作るのに必要な材料に発注ミスが起きたとしても、製造を中止延期すればいいだけ。

 

しかしながら、これまで社員同士で熱意をぶつけ合いながら仕事をしてきた背景があり、その熱意とは責任と言う名目での叱責である。

仕事が激減した最中でも、1人だけ残業を止めない社員は、その熱意に晒され続けてきた人物。

発注ミスがあってはならないと思っているのだろう…あっても売れるかどうかの確信もない製品なのに。

材料の棚卸で数字が合っていないと許されないと思っているのだろう…棚卸の月末めっちゃ暇やのに。

 

社員達の責任の所在の追求で追い詰められてきた社員の仕事のやり方は、とにかく時間ばかり掛かる。

責任の転嫁に勤しんで来た周りの社員や管理職は、その社員のやった業務のチェックすらした事すらないため、やろうとも思わないようだ。

「あれはあいつの仕事」

そんな感覚で見向きもせず、管理職は『仕事してるフリ』『何かしてるフリ』に熱意を燃やし勤しんでしまう。

 

常習化してしまった昔のやり方を、今もなお続けようとする。

どこの企業もそういう状態になっていると思う。

直に、バーストするから。絶対に。

「何かしてれば給料貰える」なんて思わないでほしい。

「頑張れば会社に居られる」なんて思わないでほしい。

頑張ってよく分からない何かをしないでほしい。

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